前回のあらすじ
香水に興味のなかった私、母に勧められてまさかのCHANELデビュー……では終わらない?
そう。終わらないのである。
あの香りと出会ったのは翌年。母とジャズのドキュメンタリー映画(オスカー・ピーターソン)を観に行ったときのコトである。
映画館のある施設に母が化粧品販売をしていたお店があるので、帰りに覗いてみることになった。
そこで母が仕事をしていたのは20年以上前のことだが、当時働いてたときに一緒に仕事をしていた人が今でも売り場に立っていた。世間話や思い出話をしていると「本当に気持ち分しかできないけど、もし買うならちょっとだけ割引するよ」という話に。
去年買ったCHANELの香水は半分も使っていなかった。使う機会が少ないのである。
那覇に遊びに行くのも、ライブを観に行くのも、旅行もそんな頻繁にあることじゃないからね。(その分特別感が割増になる。)
見るだけとはいえ、全然減ってない香水があるので後ろめたさを感じる私。
旧知の仲だからか「ぇ、◯◯ちゃんいいの?」と、話しながら楽しそうにあちこちの香水を試しまくる母。「百貨店と置いてるものが全然違うからhariも色々試したほうがいいよ」と手招きをする。
母の顔なじみの人……とちょっと安心しつつ、手にとって色々試していく。中には金額を見て「ヒエッ」と声が思わず出そうになるものもあったけど、それに気づいたのか「テスターだけ持っていってもいいよ」と言う母の同僚さん。優しすぎる。
いくつか見ていると、真っ白な瓶と淡いピンクの瓶が二つ並んでいるのに惹かれた。売り場にいる店員さんに「**というんです。そこのピンクのものは期間限定で◇◇といいます」と言われる。どっちも名前からしてすごく好き。
それぞれテスターをワンプッシュすると、どちらも清潔感の中にほんのり香る甘さがいい感じ。しかも金額的には割引されるならアリな感じ。ただ……どっちも同じ価格だから迷い始める。私はこういうときはめちゃめちゃ悩むタイプである。
すると、「気になるものはあった?」と母と同僚さんがきた。この二つなんですというと、同僚さんが白い電卓を使い計算をする。その隣では鬼の猛プッシュが始まる。
「◯◯ちゃんが割引するっていうから絶対買ったほうがいいって」「もう一個ぐらい普段遣いで持っていてもいいんじゃないの?」「那覇で買ったのは特別なときに使えばいいさぁ」
猛プッシュとか関係なく全然出せる金額だったし、日頃からちょっといい香りを纏いたいなって気持ちもあったので購入……というコトになったのである。(ちなみに母もこのとき香水を買っていた)
そのあと、母が上京した妹に電話して「hariと一緒に映画を観に行った帰りに、hariが●●の**を買ったのよ~というと」上京した妹に嬉しそうに話すと「おねーちゃんが●●の**買ったの!?」とめちゃめちゃびっくりしてた。
……最近、若い人は香水をしないという。
でもスキンケアとメイクはめちゃめちゃしている。スマホのカメラでなにかと写真撮るのは当たり前って感じだし、SNS乗せたりするからビジュは大事なんだろうけど、それはそれでちょっと寂しいなと思う。
周囲に気を使ってしまう……なんて意見もあるかもしれないけど、それは気にしすぎにも思える。二言目にはハラスメントな時代の息苦しさと言うかなんというか。
そもそも、あんな小さい瓶にお金使うって感覚がどうかしてるって感じでもあるのかなぁ。インスタに載せたところで香りまでは残らないしね。
ただ、香水なんて全くしなかった私が実際にやってて思うのは、気分のアガり方が全然違う。日常でもちょっと香りを纏うだけでどこかワクワクするような感じがするし、お出かけするときは楽しさが倍増する。
写真には残らないけど、香りって魔法のような力も持っている。私はそれを楽しめるような人でいたい(し、そういう人が増えるといいなぁ。)