『大人の女性のお洒落=香水』は当たり前だと思っていた。
私は沖縄に住んでいるが、街中でアメリカ人のすんごい強い香水を感じる……なんてことは「あるある」の一つ。くわえて、私の母はバブル世代ど真ん中で超お洒落な女性なので、鏡台には香水があった。
だから、私にとって香水をするのは当たり前だと思っていた(けど、意外とそうじゃないようで驚いてる。)
お洒落な母と違い、私は香水はおろかファッションやメイクすらも興味がなかった。
「かわいい」や「フェミニン」系がとにかく苦手。クォーターでアメリカ人体型であるため、いわゆる「女の子」みたいな服装は不格好で痛いヤツにしか見えない。そのうえ、肌になにかしら塗るのがあんまり好きじゃない。もし可能であればメイクはおろかハンドクリームや日焼け止めが無くても生きていけるカラダになりたい。流石に無理だけど←
……だが、9歳年下の妹が色気づくと(言い方!)、少し事情が変わってくる。
妹は肌が弱くてスキンケアは人一倍大変だが、それでも美しく在りたいという思いが非常に強い。大手化粧品メーカー美容部員だった母に憧れ、美容系専門学校へと進学したぐらいだ。(そんな妹の名言は「GIVENCHYの女になる」である。)
私の母は友達のような距離感で娘に接するような人だし、母子家庭でもあったので3人で遊びに行くこともあった……が、妹がお洒落にハマり母と仲良くなると、二人と私の間には『埋まらないナニカ』ができ始めていく。
だけど、私は音楽を聴いたりライブを観に行くコトがなによりもマストだったし、LCCが就航して安価で本土に遊びにいけるようになったのもあって、そこまで気にはならなかった。
そうやって過ごしていたらコロナ禍がやってきた。
ライブは軒並み中止が続き、旅行なんて怖くていけるわけがない。でも、定期的に非日常のアクセルを全開にしないと生きた心地がしない。そんな私は、母とドライブがてらアウトレットモールや百貨店に行くようになる。
色々な服があるところに行くと、自然と選択肢が増える。母や妹ほどでは無いが、遅咲きながら女性らしさやキレイでいることに目覚めていくようになった。人生ってなにがあるかわからないですねホント。
……そんなある日のこと。今でもすごくよく覚えている。
母と叔母とアウトレットモールに行き、私はちょっとお洒落なカバンを買った。だが二人はピンとくるものが見つからず、百貨店まではしごをすることになった。
妹は彼氏がいたのもあって、いつの間にか素敵な香りがする女性に変身していた。それが内心羨ましくて私は香水に興味を持っていた。
百貨店の1階のデパコスフロアを3人で歩く。普段は物産展の帰りにステラおばさんのクッキーを買いにいく通り道であって、売られている物をちゃんと見たことは無い。
ふと母が「hariは香水探してるんでしょう?せっかくだから下見で色々試してみたら?」と言った。すると叔母が「香水はなるべくいいものを買ったほうがいいよ。ちゃんとしたものは全然違うからね。」と続く。
ぇ、まって敷居高いんだけど……と、思いながらも二人に連れられて、比較的安価なメーカーの物を試すと、香りの気持ちよさに胸がときめいていく。